住宅性能表示制度とは

マイホームの購入は、とても高価なお買い物です。専門知識のない一般の購入者は、何を基準に家を選び、信頼すればよいのでしょうか。判断基準として指針となるのが、「住宅性能表示制度」、「長期優良住宅」、「フラット35適合」の3点です。今回はその中でも「住宅性能表示制度」に焦点を当てていきます。

住宅性能表示制度とは?

住宅性能表示制度とは、品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)に基づく制度です。品確法は住宅性能表示制度を含む、以下の3本柱で構成されています。

  1. 新築住宅の基本構造部分の瑕疵担保責任期間を「10年間義務化」すること
  2. 様々な住宅の性能をわかりやすく表示する「住宅性能表示制度」を制定すること
  3. トラブルを迅速に解決するための「指定住宅紛争処理機関」を整備すること

住宅性能表示制度は、従来不明瞭だった住宅の性能について法律に定められた共通のルールで評価し、表示することで、住宅の性能を比較検討しやすくしたものです。国土交通大臣が客観的評価を行う第三者機関を評価機関が性能評価を行い、住宅性能評価書として交付します。

住宅性能評価書の種類

  1. 設計住宅性能評価書……設計図の段階での評価
  2. 建設住宅性能評価書……完成後の住宅の評価
  3. 既存住宅性能評価書……中古住宅の評価

この制度は任意の制度なので、消費者が受けるかどうかを判断する必要があり、評価のための費用もかかります。費用は評価機関により、一律ではないので、費用の確認が必要です。しかし客観的に住宅性能を把握できるので、購入動機の裏付けになり、家を買う安心感が得られます。

住宅性能表示制度を受けるメリット

住宅性能標示制度を受けると客観的に住宅の性能が判断できるメリットのほか、地震保険の割引、トラブル発生時には紛争処理機関が利用できます。

(1)地震保険の割引

保険開始日 平成26年6月30日以前 平成26年7月1日以降
免震建築物割引 30%割引 50%割引
耐震等級割引
(構造躯体の倒壊等防止)
耐震等級3 30%割引 50%割引
耐震等級2 20%割引 30%割引
耐震等級1 10%割引

(2)紛争機関の利用

もし売主や施工会社との間でトラブルが生じた場合は、裁判によらず住宅の紛争を円滑・迅速に処理するための指定住宅紛争処理機関を利用できます。
建設住宅性能評価書が交付された住宅の紛争であれば、評価書の内容だけでなく、請負契約・売買契約に関する当事者間の全ての紛争処理を扱ってもらえます。紛争処理の1件当たりの手数料は1万円です。

新築住宅の場合

10項目の評価基準で、住宅の安全を評価します。新築住宅の性能の表示項目には10分野32項目(必須項目4分野9項目)があります。これらの評価項目は、住宅の外見や簡単な間取図からでは判断しにくい項目が優先的に採用されています。

この評価等級が高いほどその項目での性能は高いことになりますが、耐震性を上げると窓などの開口部を大きく取れず採光面で不利が生じることもあり、評価項目間でどちらを優先するかバランスを考える必要はあります。すべての項目が最高等級というわけにはいかないのです。

(1)地震などに対する強さ

主に耐震性、耐風性、耐雪性に関する項目です。耐雪性に関しては多雪区域のみ評価されます。また、地盤または杭の許容支持力等およびその設定方法、基盤の構造方法および形式等が記載されます。

・地震に対する建物の倒壊、崩壊のしにくさの評価

地震に対する構造躯体の倒壊、崩壊のしやすさの等級
3 数百年に一度発生する地震による力(震度6から7の1.5倍)で倒壊しない程度
2 数百年に一度発生する地震による力(震度6から7の1.25倍)で倒壊しない程度
1 数百年に一度発生する地震による力(震度6から7)で倒壊しない程度

・地震に対する構造躯体の損傷の生じにくさの評価

地震に対する構造躯体の損傷の生じにくさの等級
3 数十年に一度発生する地震による力(震度5強)の1.5倍の力で倒壊しない程度
2 数十年に一度発生する地震による力(震度5強)の1.25倍の力で倒壊しない程度
1 数十年に一度発生する地震による力(震度5強)で損傷を生じない程度

・暴風に対しての建物の倒壊、崩壊、損傷のしにくさの評価

暴風に対する構造躯体の倒壊、崩壊などのしにくさ及び躯体構造の損傷の生じにくさの等級
2 500年に一度発生する暴風(※1)による力の1.2倍の力に対して倒壊・崩壊せず、50年に一度発生する暴風(※2)の力の1.2倍の力に対して損傷を生じない程度
1 500年に一度発生する暴風(※1)による力で倒壊・崩壊せず、50年に一度発生する暴風(※2)の力に対して損傷を生じない程度

※1:東京近郊の住宅地を想定した場合、高さ10mの位置で平均風速が約35m/s、瞬間最大風速が約50m/sの暴風に相当します。
※2:東京近郊の住宅地を想定した場合、高さ10mの位置で平均風速が約30m/s、瞬間最大風速が約45m/sの暴風に相当し、これは、伊勢湾台風時に名古屋気象台で記録された暴風に相当します。

(2)火災に対する安全性

この基準では、住宅内や近隣の住宅で火災が発生した時に人命や身体が守られること、財産が守られることを目標にしています。

・感知警報装置設置の等級

安全に避難できるするようにするために、早く火災を感知して迅速に避難を開始できるよう、「感知警報装置の設置」を採り上げています。

感知警報装置設置の等級
4 すべての台所及び居室で発生した火災を早期に感知し、評価対象住戸全域にわたり警報を発するための装置が設置されていること
3 すべての台所及び居室で発生した火災を早期に感知し、当該室付近に警報を発するための装置が設置されていること
2 すべての台所及び寝室で発生した火災を感知し、当該室付近に警報を発するための装置が設置されていること
1 すべての寝室で発生した火災を感知し、当該室付近に警報を発するための装置が設置されていること

・耐火等級

延焼に対して、窓などの開口部がどれくらいの間耐火性があるか評価されます。

耐火等級(開口部)
3 火炎を遮る時間が60分相当以上
2 火炎を遮る時間が20分相当以上
1 その他

窓などの開口部以外の場合

耐火等級(開口部以外)
4 火熱を遮る時間が60分相当以上
3 火熱を遮る時間が45分相当以上
2 火熱を遮る時間が20分相当以上
1 その他

(3)柱や土台などの耐久性

建材は時間が経つにつれて、湿気や大気汚染物質などの影響を受けて錆びる、腐るなど劣化します。その結果、修繕や建て替えが必要になることもあります。この基準は建材の劣化を遅らせる対策がどのくらいされているかを評価するもので、構造躯体等に使用される材料の劣化を軽減する対策を採り上げています。

構造躯体に使用する材料の交換等大規模な改修工事を
必要とするまでの期間を伸長するため必要な対策の程度の等級
3 通常想定される自然条件及び維持管理の条件の下で3世代(おおむね75~90年)まで、大規模な改修工事を必要とするまでの期間を伸長するため必要な対策が講じられている
2 通常想定される自然条件及び維持管理の条件の下で2世代(おおむね50~60年)まで、大規模な改修工事を必要とするまでの期間を伸長するため必要な対策が講じられている
1 建築基準法に定める対策が講じられている

(4)配管の清掃や補修のしやすさ、更新対策

給排水管、給湯管、ガス管の点検や清掃・補修のしやすさを評価しています。

維持管理対策等級
3 掃除口及び点検口が設けられている等、維持管理を容易にすることに特に配慮した措置が講じられている
2 配管をコンクリートに埋め込まない等、維持管理を行うための基本的な措置が講じられている
1 その他

(5)省エネルギー対策

地球温暖化対策を含めて、冷暖房に使用するエネルギー効率を向上させるため、構造躯体の断熱措置などの程度が評価されます。

省エネルギー対策等級
4 エネルギーの大きな削減のための対策(エネルギーの使用の合理化に関する法律の規定による建築主の判断の基準に相当する程度)が講じられている
3 エネルギーの一定程度の削減のための対策が講じられている
2 エネルギーの小さな削減のための対策が講じられている
1 その他

(6)シックハウス対策・換気

いわゆるシックハウス症候群対策で室内の空気のほこり、微生物、水蒸気、一酸化炭素、二酸化炭素及び化学物質などの濃度を削減する対策が取られているか、ホルムアルデヒドなど化学物質などの濃度を測り評価します。また、建材の選定と換気方法を評価します。

ホルムアルデヒド対策(内装及び天井裏等)等級
3 ホルムアルデヒドの発散量が極めて少ない
(日本工業規格又は日本農林規格のF☆☆☆☆等級相当以上)
2 ホルムアルデヒドの発散量が少ない
(日本工業規格又は日本農林規格のF☆☆☆等級相当以上)
1 その他

(7)窓の面積

窓(開口部)には日照、採光、通風の他、眺望、開放感などの機能があります。住宅室内の採光をはじめとする開口部の総合的効果をあわせて見込んだうえで、開口部の面積と位置についてどの程度の配慮がなされているかを評価します。

  • 単純開口率:居室の外壁又は屋根に設けられた開口部の面積の床面積に対する割合
  • 方位別開口比:居室の外壁又は屋根に設けられた開口部の面積の各方位毎の比率

(8)遮音対策

マンションなどの共同住宅では重量床衝撃音(子供の走りまわる音)など評価項目は多いですが、一戸建てでは住宅外部からの遮音性が評価されます。これを透過損失等級といい、居室の外壁に設けられた開口部に方位別に使用するサッシによる空気伝搬音の遮断の程度を評価します。

透過損失等級(外壁開口部)
3 特に優れた空気伝搬音の遮断性能(日本工業規格のRm(1/3)―25相当以上)が確保されている程度
2 優れた空気伝搬音の遮断性能(日本工業規格のRm(1/3)―20相当以上)が確保されている程度
1 その他

(9)高齢者や障害者への配慮

バリアフリーのための配慮がどの程度取られているか、「移動時の安全性」、「介助の容易性」に着眼点を当てて評価されます。具体的には段差の解消、手すりの設置、高齢者の寝室と居間などが同一階に配置されているか、玄関、通路、浴室、トイレの広さなどです。

住戸内における高齢者等への配慮に必要な対策の程度の等級
5 高齢者等が安全に移動することに特に配慮した措置が講じられており、介助用車いす使用者が基本的な生活行為を行うことを容易にすることに特に配慮した措置が講じられている
4 高齢者等が安全に移動することに配慮した措置が講じられており、介助用車いす使用者が基本的な生活行為を行うことを容易にすることに配慮した措置が講じられている
3 高齢者等が安全に移動するための基本的な措置が講じられており、介助用車いす使用者が基本的な生活行為を行うための基本的な措置が講じられている
2 高齢者等が安全に移動するための基本的な措置が講じられている
1 住戸内において、建築基準法に定める移動時の安全性を確保する措置が講じられている

(10)防犯対策

防犯に配慮した住宅の計画を行う際の基本原則としては、主に以下の点があげられます。

  • 周囲からの見通しを確保する(監視性の確保)
  • 居住者の帰属意識の向上、コミュニティ形成の促進を図る(領域性の強化)
  • 犯罪企図者の動きを限定し、接近を妨げる(接近の制御)
  • 部材や設備を破壊されにくいものとする(被害対象の強化・回避)

ここでは、上記のうち被害対象の強化として、「開口部の侵入防止対策」について、どの程度の配慮がなされているかを評価します。

開口部の種類 侵入防止性能が求められる部分
開閉機構を有する開口部のうち、住戸の出入口として使用される開口部 玄関ドア、
勝手口
戸(侵入可能な規模の大きさのガラスがある場合は、そのガラス部分についても)、錠
開閉機構を有する開口部のうち、住戸の出入口として使用されない開口部 引き違い窓 サッシ枠(2以上のクレセント等が装着されているものに限る)、ガラス
開閉機構を有しない開口部 FIX
(はめ殺し)窓
ガラス

中古住宅の場合

中古住宅を売買する時、住宅の現況や性能がわかれば安心して売買できますね。
中古住宅の基準でも、基本的には等級の設定などの表示方法は新築住宅用の基準と同一となっています。ただし、遮音対策については評価対象外となります。

まとめ~安心を買う~

欠陥住宅の検知の観点からも、住宅性能評価制度の普及は望まれるところです。平成31年度の設計住宅性能評価書の交付割合は27.7%、建設住宅性能評価は22.5%と、過去最高となりました。しかしまだまだ普及が進んだとは言えません。平成12年10月に運用が始まってから20年経っていますが、3割に届かないのが現状です。申請が任意で費用がかかることが普及の進まない原因でもありますが、必須項目が4分野9項目に軽減されたので、必須項目だけでも試してみる価値はありそうです。特に中古住宅では、制度を利用することでトラブルなく安心して売買ができるでしょう。

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